本誌は、単に過去の医療事故を広報的な趣向で掲載していくのではなく、1つ1つの事例を法律家・医療従事者、双方の目を通じて解析し、裁判所が出した判断を正しく又は批判的に認識していくことに重点を置いた形で事例を紹介していきます。
そのため、各事例の冒頭サマリーでは、法律用語を極力省き、医療関係者にも理解頂ける言葉遣いや解釈を付記しています。これによって、裁判ではどのように理論が展開され、どのような手順を踏まえて判断し、結果として何がポイントとなって判断されたかが容易にご理解頂けるようになっております。
また、文中「専門医のコメント」において、臨床医による客観的な所見を見ることも大変重要なポイントと考えております。

『裁判において争点となった手技は、専門医から見て、どの程度難易度があるものか?』
『率直な見解として、今回の事故は、通常の医療従事者にとって防ぐのは困難な状況か?』
『今回の事故は、他の病院でも頻繁に発生する可能性はあるか?』
『自分が当事者だったら? 我が病院で行った場合、どう対応するか?』

など、できるだけ実際に臨床医学に携わる専門科の医師に所見を頂き、客観的な解釈も載せています。
こうした主旨をご理解いただき、本誌を病院の安全管理、若手医師の育成において活用して頂ければ幸いです。

求められる医療水準、術後の合併症、顕在しない疾患、回避不能な突発的な発症など、裁判で争点となる事柄においては、医療関係者が考える見解と、一般社会が抱く解釈とは、まだまだ乖離する点が多いように感じられます。
いま、全国の医療機関では、安全管理面の充実の対応に追われていますが、これと同様に、司法においても、医療現場の実態・本質を理解し、色々な手法を用いて的確な判断が出来るよう、各裁判所でも試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいます。
本誌を通じて、お互いがお互いの実情・理論を正しく認識し、少しでも見解の乖離が解消できることを念頭において刊行していきたいと思います。
定価2,450円(税込み・送料別) 偶数月1回15日発売
お得な年間購読も御座います(1セット:年6冊 12,600円
(税・送料込み)

 

●次号予告 2024年10月15日発売予定 第112号(B5版・160頁)

●特集
さいたま医療訴訟・令和6年度パネルディスカッション

さいたま地裁、埼玉県医師会、県内基幹病院、さいたま弁護士会等が中心になり、法曹と医療関係者の相互理解を深める目的で設立された「さいたま医療訴訟連絡協議会」が2024年7月に主催したパネルディスカッションの内容を掲載します。
今回の議題は、 「病院の安全管理責任 〜拘束及び拘束解除に伴う転落事案をもとに〜」となります。


●指標事例
1. 肝内結石の採石を目的とした内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査の後に患者が急性膵炎と診断され、その治療等に注意義務違反があったと主張して、損害賠償を求めた事例
 

大阪地裁 令和6年4月19日判決

2. 救急搬送された患者に頭部MRI検査が実施されず、AEDMの治療が遅れ、自発呼吸消失の後遺障害が残存したとして損害賠償を求めた事例
 

大阪地裁 令和6年4月26日判決

3. 医師が気管支鏡検査を行わなかったため、肺癌の発見が遅れた結果、治療を受けるべき機会を喪失し、肺癌のステージが進行したとして、損害賠償を求めた事例
 

東京地裁 令和4年12月26日判決

4. ミエログラフィーの際に脊髄損傷の高度の危険性があるL1/2の穿刺を行った過失や、危険性ついて説明を怠った義務違反があるとして、損害賠償を求めた事例
 

神戸地裁 令和5年12月14日判決


(順不同・掲載変更あり)

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